コラムNo.9 「成果を創るリーダーが決めていること」

今日本でもっとも予約が取れないイタリアンレストランは山形 鶴岡市の「アルケッチャーノ」である。都心から離れ交通の便が悪いこの店は,数カ月先まで常に予約で埋まっている。そして日本全国のみならず,海外からもこの店の料理を食べに訪れるという人気ぶりである。運よく先月予約が取れ,その評判の料理を食してきた。そこには期待を超える感動があり,この店の料理が何故人々を惹きつけて止まないかが納得できた。皿の上にのるひとつ一つの食材が,異なる強み生かし切るだけではなく,お互いが補完しあうことで想像を超える美味しさを創りだしている。それは,異質な人々が集まり自分の強みで相手の弱みを補完合いながら,全体として弱みの無い状態で目覚ましい成果を創る,シナジー効果が最大化されたチームのようであった。

料理は創り手のあり方が表現される。オーナーシェフの奥田氏は地元庄内の食材を使い,「庄内を食の都にする」という志をたて店をオープンさせた。当初は誰からの賛同も得られず,店も閑古鳥が鳴く苦境に立たされたそうだ。それでも,地元鶴岡の食料生産者を幸せにしたい,鶴岡を元気にすることで日本を元気にするということを決めて,困難に立ち向かったそうだ。そして生産者を一軒一軒まわりビジョンを伝え続けたのである。また,庄内特産のダダ茶豆を食べさせ飼育している羊肉の販路が見いだせずに廃業すると聞くと,その羊肉を持ち東京の一流レストランに飛び込み営業を自ら行い畜産家の窮地を救った。
彼の行動に心を打たれた庄内の生産者達は,奥田氏と共に「庄内を食の都にする」活動に取り組み始めた。奥田氏のビジョンに向かう姿勢が庄内の人々の心に火を付け,意欲を喚起した。そして生産者の言葉が「出来ない」「自分には関係ない」から「一緒にやってみよう」「自分達で庄内を食の都にしたい」という言葉に変化したのである。
まさにビジョン実現に向けて,一人ひとりの主体的な行動を引き出したのである。
結果生産者が独自の工夫と努力を重ね最高の食材創りに自ら取り組み,庄内ブランドの食材の認知度と人気を飛躍的に高めている。
奥田氏がビジョンを実現するリーダーとなり生産者を巻き込み,ひとりではなし得ない突き抜けた成果を創りだした。

ビジョンを実現し,期待以上の成果を創りだす卓越したリーダーとは,何を決めてどのようなあり方をしているのだろうか。奥田氏の言動から考察するといくつか見えてくるものがある。

1つは高い志を持ち,明確で具体的なビジョンを決めている。そのビジョンは人々をわくわくさせ,実現に向けて人々を動かす大きな力を持っている。そしてリーダーは信念と情熱を持ち伝え続ける。
今注目を集めている星野リゾートを運営する星野社長も「リゾート運営の達人」というビジョンを目覚まし時計の音声やマグカップの内側に書いて社員に配ってビジョンを伝え続けている。

そして2つ目は,自分以外の人を勝たせ,喜ばせる事に自分を使うと決めている。真の意味での貢献意識を持ち,自分の外側に成果を創る。それは自分を犠牲にする事ではなく,自分の強みや能力を活用して人の成果に貢献することである。

3つ目は,「自分が源である」というあり方である。それは,全ては自分が選択をした事であり,上手くいかなくても,起きている事を否定せずに事実として受け止める。どのような困難や苦境に陥っても他責にしない。それは,今は時期が悪い,誰も賛同しない,メンバーの能力が低いなど,自分の外側に出来ない理由を創るのではなく,
自分がビジョン実現の責任者となり,どのように行動すればビジョンを達成できるかを考え,最大限の努力をする姿勢と生き方である。そしてその成果を創りだすのは他の誰でもない自分自身だと決めていることでる。

そしてこのようなビジョンを実現するリーダーが世の中に溢れるほど輩出されたら,組織はどのような成果と価値を創りだすことができるのであろうか?

そして私達日本チームコーチング協会メンバー 一人ひとりも決めている。
ビジョンを実現する個人,チームが日本中に溢れた状態を創りだすこと,そしてそれを実現するために,自分が源として生きることを。

《 文責 大野久美子 》


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