コラムNo.19 「起案者もチームの一員」

仕事柄、1日あるいは2日コースの研修や数ヶ月間に渡るシリーズのセミナー、資格取得用のセミナーなどに参加してきました。自ら目的を持って学びに行った場合、そこでお会いする方々もそれぞれ目的を持って参加されているため、意欲的な方が多く、学びを通じてお互いに刺激し合っているという感覚を受けます。そしてこの場合の目的達成度は自ずと高くなると思われます。

一方で、「社長がどうしても参加しろと言うから来た」、「人事が申し込んだので仕方なく来た」など、自分の意思とは関係ないところで物事が動き、参加せざるを得ない場合は意欲はなかなかあがらないのも致し方ないことだと思います。このような背景から、企業内の研修において自主参加型(自ら手を挙げて参加する)の研修が起案されていると聞きます。この「自ら手を挙げた」か「他人が手を挙げたか」の違いが学びへの意欲に関係するからでしょうか、「なるほどな」という感じもします。

私たちがチームコーチングの依頼を受ける場合、そこには必ず「オーナー(発注者)」がいます。企業においては人事や経営企画に関する部署の役職者になるでしょう。そして、オーナーに提案する人=起案者もいます。実際にチームコーチングの効果を自社内に取り込んで、問題を解決しようとする人です。そして私たちはまず、このオーナーと起案者それぞれの期待成果を私たちの成果のハードルにしています。「どんなチームを創って、どんな成果を得てほしいと期待しているのか。」

起案者はチームコーチングを導入する組織には問題や課題があると考えているわけで、だからこそ依頼したということになります。すると、導入「された」組織は、導入されたから来たという「他人が手を挙げた」から参加するということになります。学びへの意欲はゼロか、マイナスからのスタートになるかもしれません。

そしてこの時、実は導入「された」組織の方々に知っておいてほしいのは、この組織が成果を手にしつつあるとき(成果を手にしたとき)、起案者はどんな想いでそのことを見て、聞いて、感じているかなのです。

チームコーチングを導入する場合には、2~3ヶ月の間に数回のセッションを行うことになります。セッションに立ち会っている起案者であれば、セッション中の組織の変容を目の当たりにするわけです。さらにセッション間の仕事中における変容については、日々実感することになるでしょう。もしかしたら組織自体が感じている変容よりも大きな、劇的な差を見ているかもしれません。

組織において問題を解決する人はその組織の中にいます。人間の一番強い本能が慣れ親しんだものを見ることであれば、人々はやり易いパターンを繰り返すでしょう。人間の集まりが組織であるならば、組織だってやり易いことを繰り返します。ですから、新しいパターンを取り込むことは大変なことなのです。それこそ、組織の身体に沁み込むまで、無意識に新しいパターンを手にするまで、身体に覚えこませなければならないわけです。組織の外から傍観者的に関わって解決できるものではないのです。

当初、問題を解決したいと考えてチームコーチングの導入を提案したのは起案者です。ですから問題は起案者の中にありました。そしてその問題はチームコーチングを通じて、導入「された」組織に渡りました。そして渡された組織は、チームコーチングを通じて、問題を解決し、成果を手にしました。そしてチームが成果を手にしたとき、そのチーム以上に喜んでいるのは起案者だと思います。なぜなら、成果を手にするチームが見たくてチームコーチングを導入したのですから。そしてこの時、起案者もチームの一員であると言えるのではないでしょうか。

<文責:中野喬<


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