九州のある高等学校での話です。校長、教頭、生徒指導、教科指導、進路指導各部長からなるチームが2ヶ月間のプロジェクトテーマに挑戦されました。
テーマは「新年度の教育方針と学校運営方針づくり」というものです。成果物としては
① 1年後の学校の教育システムがどのようなものになっていれば良いか
② 生徒の1年後の成長振りはどのようなものであれば良いかを明らかにし
③ それまでのプロセスを設計し
④ その上で組織編制と役割分担を決める
というようなものが考えられます。
そこでまず1年後の姿を議論することになるのですが、多くの組織でそこからはじめると発言が極端に少なくなり、
そして理想的なものしか出てこないのが普通です。
そこでまず「問題点の列挙・整理」に取り組んでいただくようにします。領域を設定して、領域ごとにやってもらいます。
進路指導、進学指導、教科指導、生徒指導、学級経営、部活指導、保護者会対応、環境整備、地域社会対応、領域は沢山あります。
ここで起こる現象として、これらの各領域で上げられる問題点で最も数多いものが「教員」に関する問題点です。
それは、「変革への意識が共有されていない」「変革への実行力、行動力が欠如している」「悪習が数多くある」
「チームワークをしようとしない」「育てたい生徒像を持っていない」「教員の授業力が不足している」
「生活指導力が不足している教員が居る」「業務を人任せにする教員が多い」「教員間で学習指導に温度差が大きい」
「部活指導で自分本位の指導をする教員が多い」こんな問題が列挙されます。
これらは明らかに「彼らには問題がある」という視点での発言になっています。
この発言をしている空間では、そのチームに一体感があるような感覚を覚えるかもしれません。
しかしそれは錯覚です。なぜなら、そこからは次のステップへの湧き上がるようなモチベーションは生まれてこないからです。
「これらの問題を作り出しているのは何だろうか?」という質問をしてみます。
「教員の能力を開発するシステムを開発できていない」「変革への意識付けができていない」
「目標を明確にし、戦略戦術が作り出されていない」「授業力の評価と育成をするシステムを作っていない」
「人間性で生徒を惹き付ける教員団が育てられていない」というような答えが返ってきます。
「それらの問題を作り出している自分たちの内側の空間は今どうなっているのだろう?」という質問を用意します。
この質問を受けた先生たちに静かな時間が訪れます。しばらくして、校長がうなるような声で発言されます。
「これが現実。そしてこれらは過去のこと。
今ここから我々の手で一つ一つ作りだしていこう」聞かれた先生たちの顔に昂揚感が満ち溢れます。
リーダーシップの源泉は各メンバーの心の中に生まれている意志ではないかと思います。
どのようなことを創りあげたいと思っているか?強い思いがあるか?緊急性はどうか?自分はどの程度の貢献をするつもりか?
他のものを横においてもそれに関わる気持ちがあるか?各メンバーの心の「内側の空間」になにがあるか?
これがチームへの貢献を決めるようです。
とすれば、どのようなプロセスで、どのように働きかけて「内側の空間」に強い意志を創ってもらうことが実現するか?
これがチーム創りの要諦、ということになるのかもしれません。
<文責:今給黎 勝<